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おいおい、マジかよ…こんな子供に何が出来るってんだよ
いやいや、オレは差別はしない主義だよ?(多分)
しかし、ペア組むのが若いって聞いてはいたがコレは無いだろ?な?課長?
桑島平(くわしま たいら)は目の前の少女と課長を交互に見る
銀幕署の刑事課に新しく配属される新人警察官と聞いていた桑島は、昨日の晩から、ずっと考えていた
どうやって、しごいてやろう…とか、自己紹介の第一声はフランクな方が良いのか、それとも威厳たっぷりな方が良いのか?とか…近頃の若いもんは弛んでるからなビシッと叱る時は叱って…とか
それが、どうだろう…何度見ても少女だ
「初めまして、流鏑馬明日と申します。」
黒髪のストレートの少女は戸惑っている桑島に自己紹介をした
「お、おう…く、桑島だ、よ、よろしく頼むわな?…………って何緊張してんだよ!オレっ!」
少し声がうわずいた自分にツッコミを入れた瞬間、電話が鳴った
「桑島、早々だが、まるぎんの前で刃物を振り回した輩が出たらしい」
「何ぃ、ちぃっ………しゃーねー、流鏑馬行くぞ!」
「……………はい。」
〜スーパーまるぎん〜
桑島の運転で、5分程でスーパーまるぎんに到着し、桑島と明日は刃物男を確認する。
「ったくよぉ、よりによって女とペア組むの初めてって時によ、刃物とかやめろよな」
「そーよそーよ!タイムセールが始まっちゃうじゃない!」
「いや、おばちゃんっ!!出しゃばっちゃダメだからね!危ないから!ねっ!」
桑島はタイムセールを楽しみにしていたオバサマ連中にツッコミを入れつつ前へ進む
「おい、おめぇ、何が気に入らなくて、んなもん振り回してんだ?危ねぇだろ?まず話を聞いてやっから、ナイフ捨ててコッチに来いや?」
「あんたになんか、解るかよー!俺の好きな女優がベイサイドホテルに泊まってるって聞いたから覗きに行ったのに会えなかった、俺の気持ちなんかよー!」
「は…?……………いやいやいや!なにそれ!?自暴自棄になる切っ掛けがソレ!?」
「えー!?ダレ!?ダレなのよ、その女優さんって言うのはー!?」
「や、だから、食いつく所そこ!?おばちゃん達は話がこじれるから、黙っててくんないかなーぁ!」
「オレに注目してくれよー!どーしたら良い?死んだら注目してくれる?」
桑島は目が点になりかけたがグッとこらえてツッコミ業に徹する。
「桑島さん…。傷つく理由は人それぞれです…。ただ……、人に迷惑をかける行為は良く無いですね。」
ナイフ男の方を無表情で見つめる明日は、一歩一歩ゆっくりと近づいて行く
「オレはココで目立って憧れのアノ人の注目を浴びたいんだー!近づくんじゃねーよ!」
「流鏑馬!!!」
桑島が叫んだ時には、ナイフ男はやみくもにナイフを振り回し、明日に突進して来た!
………………が…明日の綺麗な回し蹴りでナイフを落とした
「今だーー!!」
大勢の警察官が男を捕らえる。男の叫び声や、おばちゃんの応援の声や辺りが騒々しくなる
パトカーの音、タイムセールの掛け声……桑島は明日をじっと見つめていた。
騒動が収まった、まるぎんの1Fフードコートでは桑島と明日が関係者の話を聞き終わり自販機のボタンを押している。
「お前な、アレはダメだぞ」
「…………すみません。」
「お前な、アレは危険だ」
「…………すみません。」
「お前な、初めてのアレがソレでどーすんだ」
「すみませんでした、でも…。傷つくのを事前に止めたかったので…。」
たとえ犯人であろうと、傷つくのを止めたかった。
「お前な、アホか、お前が傷つくと心配する奴がいるだろ、家族…とか」
明日の両親は幼い頃に失踪していて、今は祖母が田舎で一人で暮らしている
「………そう…ですね…すみませんでした。」
「家族以外もそーだ!配属早々に相棒に傷つけられちゃぁ、このオレ様が黙っちゃいねーってな?」
「………………それは、ツッコミ的な意味でですか?」
「バッキャロー!オレぁ、これでも銀幕署の中ではベテランで受付のミヨちゃんもキャーキャー言うくらい剣道とかスゲーんだって!」
少しだけ、明日の口元が緩んだ…配属されたばかりの彼女も緊張していないはずは無いのだ
あと2、3分くらいは、先輩刑事である桑島を立てて自慢話を聞いてあげよう…メイヒはそう思った。
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